数々の文学作品、映像作品においてミステリアスで、ときにエロチックなものとして描写されてきた仮面舞踏会、またの名をマスカレード。もとはヨーロッパ世界における中世の宮廷文化で、ヴェネツィアが発祥とされています。いまも世界中のどこかで密やかに開催されているのでしょうが、これを定期的なイベントとして誰でも参加できて、誰でも鑑賞できるような形に昇華させたのが、ヴェネツィアのカーニバルといえます。一種の仮装大会ですが、ハロウィンのようなおちゃらけた雰囲気は一切なく、むしろ能のような幽玄さを参加者はみな身にまとっています。ヴェネツィアの素敵な街並みとも相まって、どっぷりと中世・仮面舞踏会の世界観に浸ることができるのではないでしょうか。
ヴェネツィアのカーニバルとは?
リオのカーニバル、トリニダード・ドバコのカーニバルと並び、世界三大カーニバルの一つといわれています。リオ、トリニダード・ドバコが南米、中米なのに対し、ヴェネツィアだけヨーロッパからの選出です。またリオはサンバ、トリニダード・ドバコはサカと種類に違いこそあれ、どちらも華やかな衣装を着て踊るという点は共通です。それに対し、ヴェネツィアは仮面舞踏会が元になっており、踊るどころかむしろ参加者は動きは殺して、ポージングに専念します。リオ、トリニダード・ドバコとはまったく趣きの異なる祭といえます。

ヴェネツィアのカーニバルは一種の仮装大会ですので、参加者は観衆の視線がどれだけ集まっているか、またカメラのレンズが何台自分に向いているかを競っています。もちろん大道芸人のように、撮影がおわってチップを要求するようなことも、けっしてありません。写真が好きな方にとっては、まさに天国のような祭です。
そもそも「カーニバル」とは?
カーニバル(Carnival)は別名を謝肉祭といいます。「謝肉」ですが、肉にありがとうと感謝するわけでも、肉にごめんなさいと謝るわけでもなく、肉を断つ(謝絶する)、つまり断食するということです。カトリックでは、灰の水曜日からキリスト復活までの40日間が断食の期間と期間と決まっています。これを四旬節(しじゅんせつ)といいます。四旬節に入る前の数日から数週間を、好きなものを食べて、飲んで、お祭り騒ぎをして過ごそう、というのがカーニバルの趣旨です。
キリスト教に関係した行事ではあるのですが、公式に認められたものではありません。民衆が作ったものであり、お祭り騒ぎをすること自体が目的ですので、そこに厳めしさ、堅苦しさは一切ありません。難しいことは考えず、純粋に楽しめばいいだけです。
古くは、ゲルマン民族が春の訪れを祝う農耕祭に起源を持つともいわれています。土着の信仰と、新しく入ってきた宗教が融合するというのは、日本でもよく見られる形です。
ヴェネツィアのカーニバルはいつ開催される?
カーニバルの期間は、四旬節に入る前の数日から一週間です。四旬節はキリスト復活までの40日間です。ではキリスト復活の日はいつなんでしょうか?
これがすこしややこしく、はっきり何月何日と決まっているわけではありせん。決まっているのは、「春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」ということだけです。なので毎年変わります。4月初めから4月中旬にかけてが多いですが、それより早い場合も遅い場合もあります。
カーニバルの終了日はそれから約1.5ヶ月(四旬節は安息日を含まず40日なので、含むと46日となる)遡るので、およそ2月中旬から2月下旬です。ヴェネツィアのカーニバルは約10日間開催されるので、カーニバルの開始は2月上旬から中旬となることが多いです。ちなみに今後の予定は下記です。
今年2018年が2月3日~2月13日だったため、来年は20日も遅いスタートとなります。
ヴェネツィアのカーニバルはどこで開催される?

ヴェネツィアには違いないですが、はっきりヴェネツィアのどこと決まっているわけではありません。サン・マルコ広場ではコンテストが開かれますが、サン・マルコ広場だけが会場というわけではありません。
参加者にはどうやらそれぞれお気に入りの場所があるようで、それがある橋の上だったり、ある教会の前だったりします。ヴェネツィア全体が会場だと思えばよいでしょう。
お気に入りの場所に向かって、移動している途中と思われる参加者もたくさんいます。彼らの中には、お気に入りでないところで写真を撮られるのが不本意なためか、単純に急いでいるためかわかりませんが、カメラを無視したり、ひどり場合にはしっしっと追い払うようなしぐさを見せる者も、ごくまれにいるので注意が必要です。
ヴェネツィアのカーニバルを観るためのチケットは?
ネットを調べると「ヴェネツィアのカーニバル」としてチケットが販売されていたりしますが、それらはディナーショーやボール(舞踏会)など、付加的なものです。通常の楽しみ方をするのであれば、とくにチケットは必要ありません。
「有料観覧シート」というものもありません。ヴェネツィアの街ぜんたいがカーニバルの舞台ですので。
ヴェネツィアのカーニバルにドレスコードはある?
仮装して参加するのでなければ、とくにドレスコードはありません。普段着で結構です。寒い季節ですので、ダウンジャケットを着ている方が多いです。
ただし、ディナーショーやボール(舞踏会)など、特別な会に参加するのであれば、それなりのドレスコードが要求されるかもしれません。
いざ、ヴェネツィアのカーニバルへ!
これからは写真とともに、カーニバルの様子をお伝えしていきます!

アカデミア橋から。有名な撮影スポットです。背景に、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂のクーポラが見えます。

われらにゃん銃士!

モノトーンで決めるのも、クールで格好いいです。

頭の羽飾りは、リオやトリニダード・ドバコのカーニバルに通じるものがあります。

12星座を司る神々です。左の神の右肩から時計回りに、うお座、おひつじ座、おうし座、ふたご座、かに座、しし座、右の神に移って、おとめ座、てんびん座、さそり座、いて座、やぎ座、そして最後にみずがめ座です。

一転してポップな印象です。「ワンピース」とかの漫画に出てきそうなデザインです。

男女コンビになっているのも、キャラが立っています。

ジョニー・デップが演じると、そのまま映画になりそうなキャラクターです。

少女趣味的ですが、中身はしわしわのお婆さんであってもおかしくありません。

仮面をつけずに、はたしてこんなナルシスティックなポーズを取ることができるでしょうか。

天使と悪魔が、なにやら言い争いをしていました。

悪魔に矢を向けられると、さすがに怖いです。

右の方がつけているのはペストマスクです。ヨーロッパでペスト(黒死病)が流行ったとき、こうしたマスクをつけたペスト医師なる職業が生まれました。

夫婦で仲良く出ています。

同じく。

金の雨が降っているようです。

サン・マルコ広場に面してあるカフェ・フローリアン(Caffè Florian)は、ヴェネツィア最古のカフェといわれています。

まるで映画のワンシーンを覗いているようです。

なにやらもめています。
店にとってはただのクレーマーかもしれませんが、衣装のせいで西洋絵画における劇的な一場面として、切り取られています。まるで『最後の晩餐』でユダの裏切りが明かされつつあるとき、イエスに詰め寄る弟子たちを見ているようです。

腕つかんじゃった。

そのままポスターになりそうな、まぶしいほどの営業スマイルです。

最後に
いかがだったでしょうか?
同じ世界観を共有していながら、驚くことにひとつとして同じ衣装はありませんでした。彼らのクリエイティビティに心底感服せざるを得ません。
今回たまたま目にしたのがこれだけという話であって、衣装のバリエーションは想像力の数だけ、無限にあります。何度訪れても楽しむことのできる、奥が深いカーニバルです。